ミッシングチャイルドビデオテープ 感想※ネタバレあり

管理人より

今回は、現在劇場公開中の映画「ミッシングチャイルドビデオテープ」を観た感想を書いていきます。

先週末近くの映画館で公開がスタートしたので、早速行ってきました。写真は来場者特典の小説「未必の故意」です。

パンフレットにも書下ろし小説が収録されているということでゲットしたかったのですが、売り切れ・・・。前情報で売り切れが続出していると聞いてはいたのですが、まさか公開から3日で売り切れているとは、驚きです。

小さいスクリーンではありましたが8割ほどの客入りで、上映館が少ない映画としてはかなり話題の作品ではないでしょうか。

前情報を極力入れずに鑑賞したのですが、最近のホラー作品にしては珍しく、じわじわと這い上がってくる恐怖を感じられる作品でした。ジャンルとしては怪異、因習、ヒトコワ、都市伝説と、複数の要素が含まれています。

先に述べておきますが、すごくおもしろく、おすすめの作品です!極力内容に触れないようにしつつ、最後に考察(ネタバレあり)を載せますので、これから鑑賞される方は鑑賞されてから考察をご覧になることをおススメします。

それでは、行ってみましょう。

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最近のホラー作品との違い

最近のホラー作品って、アグレッシブな幽霊出まくりじゃないでしょうか?

洋ホラーでの驚かせる表現(突然大きな音や声が聞こえる、いきなり画面いっぱいに恐ろしい顔が映る・・・etc.)のことをジャンプスケアというのですが、最近のホラー作品はジャンプスケアが用いられることが基本になってきているように感じます。

だいたいのパターンとして、「幽霊・怪異に襲われる→めちゃくちゃ強い霊能力者登場→幽霊と対決して主人公(あるいはその隣で一緒に襲われた人物)が生き延びる」の大筋が決まっています。

それ自体が悪いわけではありませんが、この作品は一味違います。

「何か」は確実に存在します。しかし明確に姿を現すことはありません。襲い掛かってくることもありません。妙に強い霊能者も登場しません。「間違いなくそこにいるけどいない」のです。

ただ、人の手に負えない「何か」になすすべなく巻き込まれていく様子が描かれます。それが神の類なのか、あるいは怨霊か、明確な描写は無く、それによって観る人それぞれに考える「余地」と、作品のリアリティが生み出されています。

ジャンルについて※ネタバレ含む

先にも述べましたが、様々なジャンルがミックスされています。

その中でも私は、この作品を「ヒトコワ」人の怖さを描いたものだと受け取りました。

古くから人々が「神様」や「いらないもの」を捨ててきた山。それらすべてを受け入れ、やがて人の手に負えない「何か」が住まう地となっていきます。
その過程には人間のエゴと残酷さを感じますし、それを前提として登場人物の行動を見ると恐ろしい事実が浮かび上がっていきます。

考察・感想※ネタバレ含む

 

正月に公開された年賀状を模した宣伝画像です。
いったいどういう意味なのか、映画を観てわかりました。

この画像に映っているのは、映画の主人公である兒玉敬太以外の兒玉一家3名で、文章にある「新しい場所」は作中の舞台である廃墟(入場者特典の小説で迷い家【マヨイガ】とよばれています。)のことでしょう。

この廃墟が建つ山は、廃神社の鳥居や集団墓地を壊した後の遺骨、その人にとって「捨てたい」ものを捨てていい場所として存在していました。

主人公の敬太は幼少のとき迷い家にたどり着き、そこで心の奥底で「いらない」と思っていた弟を図らずも捨ててしまった。その結果弟は行方不明になってしまったのです。
さらに作中の終盤、迷い家でついに見つけた弟のそばに亡くなった両親の姿が現れます。敬太にとって不要の存在となった「両親」のことも捨てたのでしょう。

そして敬太自身に寄り添い、一緒に行動していた霊感のある同居人(天野)も捨ててしまうのです。
考察ですが、敬太という人はあまり積極的に人と関わろうとする人物でなく、肉親でさえも異質なものとして捉えています。そのような人がなぜ天野と同居しているのか。
天野の霊能力で弟を見つけだすことを期待していたのではないでしょうか。
迷い家で弟の姿を見つけた敬太に天野は言います。「あれは弟ではない、弟はずっと敬太のそばにいた」と。
その言葉ですでに弟が亡くなっていることを確信した敬太は、その瞬間、無意識に天野のことを「いらないもの」と思ってしまったのでしょう。結果として、天野は迷い家に閉じ込められてしまうのでした。

敬太、天野と一緒に迷い家に入った女性記者は、二人を追いかけようとしたときに男性の腕に掴まれて動けなくなります。この記者はずっと見えない何かの存在に恐れ、家でも防犯ブザーが無いと過ごせないほどでした。邪魔をするなと手を振りほどいた瞬間、その姿は消えてなくなります。
一件恐ろしい幽霊が現れたシーンに見えますが、私はこの腕が彼女の守護霊のような存在だったのではないかと考えています。

天野と女性記者が初めて出会ったとき、天野は彼女に防犯ブザーは意味ないと話します。
これは幽霊だからという他に、彼女に害をなす存在ではないということだったからではないでしょうか。
防犯ブザーが作中で鳴るのは一度だけ、彼女が先に山に入った敬太を追いかけようとするシーンです。
まるで彼女を正気に戻すように、彼女を止めるように突然ブザーが鳴り響きます。

彼女は邪魔をするなと、その腕を振りほどきました。もし彼女を守っていた存在が「いらないもの」として迷い家に囚われてしまったのなら、その後の彼女はどうなってしまうのでしょうか。

敬太と女性記者、そして小説の主人公。迷い家から生きて出ることができた人物に共通していることがあります。それは「熊よけの鈴」の音を聞いたという点です。
作品の冒頭で遭難した児童に敬太は熊よけの鈴を渡す際、児童は「あくまよけの鈴?」と聞き間違えるシーンがあります。
この作品において迷い家とは「捨てられたものたちが集う場所」であり、悪魔の類なのではないでしょうか。

幼い弟には「ぷよぷよ」としか表現できないもの。

まとめ

思い出す限りのことを書きましたが、まだまだ見落としているところはたくさんあると思います。
(そんな山にしょっちゅう子どもを連れて行っていた父親ってやばいやつじゃないかとか・・・)

来場者特典の小説で補完された部分があったので、パンフレットの小説がめっちゃ気になるー!!
機会があれば読んでみたいものです。

すごくいい作品なので、ご興味が湧いた方はぜひ劇場に行ってみてください!!

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